2022年06月02日21:01理不尽
精神科で診療していると社会制度に理不尽さを感じることがあります。
あるSCの患者さん、以前は一般就労できていたため貯金もそれなりにありましたが統合失調感情障害の発症にて医療保護入院。落ち着くのにちょっと時間はかかりましたが数週間で退院しました。しかしもう何回目かの発症だったため前職は退職することとなり、本人ももう一般は無理かなと障害者の就労継続支援のB型作業所で働くこととなりました。今「働く」と書きましたがB型というのはタオルの折りたたみなど単純な作業で、雇用契約とはならないため労働者ではなく建前上は施設の利用者ということになっています(A型の方は雇用契約を結び、時給も最低賃金以上は保証されています)。ですので給料がえげつない額となっています。聞いて驚いたのですが、ちゃんと朝から夕方まで週5回働いて(利用して?)も1ヶ月の給料が1万円くらいだそうです。それじゃ生活できないじゃないか。そうなんです。できません。住むところはグループホームという障害者の方が入れる住居があって、食費込みでも4万くらいで済むのでそこは格安なのですが、それでも収入が1万円では赤字です。障害基礎年金該当せず、生活保護を申請しようとしても貯金があるからダメだと。じゃあいっそのこと貯金を適当にギャンブルにでも使い込んでしまって障害がもっと進んでB型にすら頑張って行かない方が、生活保護を受けられたり障害基礎年金受給できたりするということになります。タオル折りが単純な作業と言っても、それを丸一日やるとそれはそれで大変な作業です。私ならたった数時間で飽きると思います。本人としてはそれを休まずに毎日一生懸命働いていたので、とてもかわいそうで、本人は最近診察のたびにその悩みを吐露するようになり、そのストレスでまた症状が再発しかねない状況です。今はせっかく貯めた貯金を崩しながら生活しており、底をつきたら生活保護となっていくのでしょうか。恩師が医師には3つの視点が大事だとおっしゃっていました。Medicalな視点、Academicな視点、それからSocialな視点。確かに症状改善して退院できてもその後幸せな生活を送れないといけませんから社会的なサポートも大事ですね。平等性を保たないといけないからそこは杓子定規なルールとなっているのでしょうけど、頑張っている人が報われないのはすっきりしません。そこはこちらも感情移入してしまいますね。