2022年02月

2022年02月06日18:39メシの種
 前回は新年早々のろけて失礼いたしました。
 もう40日くらい連続になるでしょうか、あれからも毎日短い時間でも必ず会っています。昔は数ヶ月に1回しか彼女に会わなくても平気だったんですけどね、自分がそんなにハマるタイプだったのかと新しい自分を再発見した驚きとともに、自分が恋愛における依存症の類いの病気にかかってるんじゃないかと思いますね(;゚ロ゚) えーと私も一応精神科医ですから自分に異常性がないか客観的に経過フォローしていきましょう。しかし医師国家試験前にこんなんにならなくて良かった(..;) 国試前に今の彼女と出会っていたら、毎日楽しかったかも知れないけどその代償として国試には間違いなく落ちていたことでしょう(^0^;)

 さて私は研修医1年目のときはかろうじてコロナの前でしたから、産業医の集中講習がまだ行われていたので有休取って産業医の資格を取りました(2019/8/31、9/29記事参照)。それを活用しないまま既に2年が経過していたんですが、ついに産業医の案件がやってきました。産業医のお仕事は人気なのか医師の求人紹介サイトを検索してもなかなか見つけられなかったのですが、つい先日先輩医師から自分はもう辞めたい案件があるから引き継がないかと突然言われ、産業医の経験がまったくないので戸惑いましたが、引き受けることにしました。不思議なことですが、ずっと探していたもののはずなのにいざ見つかると戸惑うものですね。やりたいけど自分がやれるものなのかという不安がやっぱり大きいからでしょう。今回の案件は数百人が働いている工場の産業医で、教科書に例として載ってそうな典型的な産業医っていう感じです。早速見学に行きましたがバカでかい敷地にいくつか工場があり、その中でもいくつも部門が分かれており、それぞれ色んな部品や器械(見てもそれが何なのか素人には分かりません)を作っていて、私も一応物理系の大学卒なのですが業務の物理的な説明をされてもちんぷんかんぷんでした(T-T) ただ実際の仕事内容はとりあえず私にはかなり過酷に思えました。24時間体制で3交代で勤務しているのでそれだけでも生活が不規則になって大変と思うのですが、ゴミが混じらないようにするため簡単な作りではありますが防護服みたいな窮屈な作業服を着て、耳も覆うような大きな帽子をかぶり、ラインで流れてくる部品を一つ一つひたすら組み立てていくわけです。その同じ作業を何時間も延々と行います。1日が終わってもまた明日同じ作業をしますし、明日が終わっても明後日、しあさって…と何年も同じことをするわけです。人間、ロボットじゃないんだからこれは面白味もないしすぐ飽きると思うのですが、そこの労働者の方に話を聞くと確かにそういうのもあるし配置転換の希望も出せるけど、また一から仕事を覚え直さないといけないことを考えると同じ部署で同じ仕事をしている方がマシということでした。
 人にはそれぞれ幸せの価値観が違うのでなんとも言えませんが、一つの工場のある一つのラインに流れてくる部品を組み立てるという同じことをひたすら繰り返していくことにそんな大きなやりがいを感じられるのでしょうか。実際は労働者の方々はやりがいというよりも自分の人生の時間を切り売りするような形で1日8時間と割り切って収入を得て生活を成り立たせているのでしょう。休憩時間以外同僚とそんなにお喋りをすることもできないし、仕事の対象が「モノ」ですから、人と関わる仕事が好きな私にはこのお仕事は無理です。しかしこんな片田舎にすらこういった工場がいっぱいありますから、日本中、あるいは世界中で工場勤務に従事している人はごまんとおられるでしょう。その方々のおかげで何らかの製品ができあがり私たちが快適な生活をおくれているわけで、感謝しなきゃなぁという気持ちが芽生えましたよ。
 そういえば彼女の弟も高校卒業後すぐ同じような工場で働いているのですが、若いのに仕事の愚痴や辞めたいなどとも言わないで毎日ちゃんと働いてるから偉いですよ。そりゃあ仕事以外の時間は彼女といっぱいラブラブしてもよろしい。彼女とラブラブしたから仕事も頑張れる、仕事ちゃんと頑張ったから彼女とラブラブできる、そういった好循環が生じているようです。弟はそんな生活をもう1年ほど延々と過ごしているようですが、前回も書きましたが私は最近、人生そんな単純な毎日でもいいんじゃないかと思うようになりました。やれ生きがいとかやりがいとか言うけど、そんなにそこらじゅうに転がっているものでもないのかもしれません。社会学者の上野千鶴子さんも著書の中で「仕事は天命でもなければ生きがいでもなく、メシの種」と書いています。
 産業医は社会を俯瞰的に眺めることができて医学とは別の良い勉強になりそうです。