2019年12月

2019年12月26日20:57若年性脳梗塞
 先日、救急外来で次から次へとやってくる患者をさばいていましたら、昼過ぎに若いカップルがウォークインでやってきました。彼氏の方が患者で、彼女は付き添いです。特に持病もなくとても健康そうです。主訴は今朝起きてからの左腕のしびれと麻痺でした。彼氏もイケメンでしたが、彼女は1000人に1人レベルのめちゃくちゃな美人です。いつも一緒に寝てるそうで、これはもう典型的なSaturday night palsy(橈骨神経麻痺)でしょ、と心の中で決めつけてました。羨ましいのぅ…という気持ちとともに笑 
 受診時にはしびれはなく、麻痺も起床時よりはマシになったとのこと。当初はグーチョキパーもできなかったそうですが、私が指示したときにはぎこちなさはあったもののなんとかできてました。腕枕なんてしてないですよぉとはにかみながらの言葉には、私はだまされないぞと一閃。緊急性はないと判断して帰そうと思いました。
 …が、前夜の泥酔もなく、上腕部を圧迫した確固たるエピソードはないのです。念のため上級医にコンサルトしました。笑われるかもしれないなと思いながらも症状を伝えたところ、「それ脳梗塞やろ!早急にCTとMRIを撮れ!」とのこと。えー!!こんな健康そうな若者が脳梗塞!?ホントに疑いもしなかったのでコンサルトの仕方がまずかったのかなと思ったほどでした。
 その結果…、CTでは明らかな異常所見は認められなかったものの、MRI拡散強調像で高信号域が認められました。上級医からすぐに脳外科コンサルトし、脳外科部長がすっ飛んできて、即点滴治療即入院となりました。
 幸いと言っていいのか分かりませんが、受診時には既に発症から4.5時間以上たっていたため血栓溶解療法の適応はありませんでした。しかしもし私が診断にぐずぐずしていたために、あるいは帰宅させてしまったために4.5時間というデッドラインをオーバーしてしまったとしたら、医療ミスとなるところでした。
 後ほど脳外科の先生の話を聞いたところ、数多くはないけれども若年性脳梗塞というものがあるとのこと。そして患者を診ずとも研修医から聞いた症状だけですぐに脳梗塞を疑った上級医、さすが百戦錬磨だと思いました。救急外来に患者が押し寄せるこの年末に、それをさばくだけで必死だった私は一人で大反省会を執り行ったところでございます。